五感でみつける 目で感じる
ぬの。布。nuno。
ぬの。布。nuno。
わたしたちの生活に欠かせない布。
過日、香川県の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館を訪ねたところ、「須藤玲子:NUNOの布づくり」が特別展示されており、既成概念を壊す「布」の可能性や世界観に魅了され、
未だ余韻に浸り中。
「布」はその素材の風合いや色彩を見て取ることはできるけれど、専門家ではないわたしたちは、その制作過程をつぶさに目にする機会は皆無に等しい。
いわば、職人の仕事。ともいうべきそのプロセスはある種「聖域」のような雰囲気もあり、興味はあるけれどもやすやすと立ち入ってはいけないようなー特別な許しを得られた人のみ観察できるようなーそんなイメージを勝手に抱いているのはきっとわたしだけではないはず。
ところが、このNUNOの展示では、こうした普段はお目にかかることのできない制作過程を見事、音と映像を交えた独自のインスタレーションで展開。
創作の現場にひとときでも引き込まれることで、日常身に付けている布の成り立ちや国内外の繊維の歴史など、展示を見る前と後で世界観が一変する。
そして、蚕や麻、綿に羊毛etc.といった古今東西、いにしえの方々によって紡がれてきた繊維の叡智が、現代の職人の方々のクリエイティビティ、そして工業との協働や、サステナビリティへの可能性といった社会性をも包含することを提示してくれ、生活必需品としての布たちがわたしたちに示してくれる無限の視野や可能性にただただ圧倒されるばかり。
展示物はもちろん言葉を発しないし、説明書きも最小限。
ただそこに存在しているだけなのに雄弁にその歴史や役割をわたしたちに物語る仕掛けのすばらしさ。
今回はたまたま「布」だったけれど、たとえば日頃手にしている器をたどると「土」や「石」に還るし、布も染色の世界のプロセスはまた新たな視点が広がるに違いない。
日常目にしているもの、手に取っているものーその仕上がりはさることながら、それらの過程においても、こんなふうに普遍的な美を見出して私たちに提示くださるクリエイター須藤さんの熱量と類まれなるセンスに大いに感化され、会場を後にしたのでした。
ちなみに、この美術館は、香川県出身の猪熊弦一郎氏記念の美術館。
「どんなものにも必ず美は存在する。」「アートはこころのバイタミン。」というのが口癖だったそう。
偏愛している猪熊弦一郎さんについても語りたいことは山のようにあるのですが、それについてはまた別の場所で綴ることといたします。
みなさんのアート体験にも興味津々!
すてきな秋をお過ごしください。
2023年10月29日 ●
Miki
English Lab/ doers(ドアーズ) 主宰。完璧さよりも小さな一歩を応援するパーソナルイングリッシュコーチ。文章やコーチングレッスンをとおして、心を整えきらめく日々を提供できたらと探求する日々
https://lit.link/doers