五感でみつける 目で感じる

幽玄の世界、夏の入り口。

源氏と平家。
と聞いて思い出されるのは、かの有名な壇ノ浦の戦い。

―だったのですが、
先日人生はじめての天然ホタルを鑑賞する機会を得て、いま同じ質問をされた
なら、迷わず「ゲンジボタルとヘイケボタル!」と答えます。

昆虫博士ではないので、あくまで聞きかじり(しかもにわか)情報ですが、ゲ
ンジボタルは1.5センチから2.0センチほどの大きさで、生息地は川辺(もちろ
ん清流)が主。光を合わせながら集団で飛び回るそう。

一方のヘイケボタルは水辺に限らず丘陵部にも潜んでいるとか。
そして、ゲンジボタルより体も小さいため光も弱いとのこと。

ホタルの姿を目にすることができるのは、美しい水辺を有した場所、かつ1年
のうち数週間と限られて、日没後の宵闇でしかみることができません。

けれどもどうしても天然のホタルに会いたい。
独特の光と幽玄の世界の入り口に身を置いてみたい。
そうずっと願ってきたのでした。

そして。
ついに先日、長年あこがれ続けたホタルの里、山口県下関市北部にある豊田町
でその夢がかないました。

ここでは季節限定でホタル舟を運行していて、清流をゆったりとした竿
さばきで行く船上から光の乱舞を楽しめます。

今の時代、簡単にその様子を画像や動画で拡散できそうなものですが、天然記
念物となっているホタルの生態を損なわないため、いざ乗船したら一般客のわ
たしたちはスマホはじめあらゆる電子機器の利用はNG。

けれども逆を言えば、いにしえからその姿に魅せられてきた人々の風流な感覚
を現代のわたしたちも同じように味わうことができるとは、それはそれで得も
言われぬ贅沢です。

川のゆらぎと風のよそぎ、湿った初夏ならではの空気。
虫の音。薄く輝く三日月。
ゆったりと耳元に心地よく響くせせらぎ。

そしてー目の前に広がる幾千ものやわらかな輝き。
森のしげみに、空中にーそこかしこに舞うホタル。

次から次へと消えては光り、また消えてー
万華鏡の中に身を投じたような言葉にならない美しさ。

幽玄、という言葉はたとえば今まさにこうした景色の中で
生まれたことばではないかしらー。
そんなことを感じてしまうほど息をのむ眩いひとときだったのでした。

船頭さん曰く、このホタルの無数のひかりは
「愛のメッセージ」だそうです。
求愛の証として、この季節に連日静かに灯す愛のことば。

わたしには平和のひかりのようでもありー
本格的な夏を迎える自然界のサインのようでもありー
汗ばむ初夏の夜を静かに静かに味わったのでした。

ちなみに西日本と東日本ではホタルの光の速度や間隔も異なっているそう。
あいにく西日本ではほぼ終わりを迎えているけれど、
これからまだ見られる地域にお住まいの皆さま、
はかなくも宇宙的な輝きを夏の印としてぜひ刻んでみては。

*画像は現地のものではなくイメージです

2023年7月3日 

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Miki

English Lab/ doers(ドアーズ) 主宰。完璧さよりも小さな一歩を応援するパーソナルイングリッシュコーチ。文章やコーチングレッスンをとおして、心を整えきらめく日々を提供できたらと探求する日々

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