五感でみつける 目で感じる

ダディリ

最近立て続けに海外にいる友人知人の数年ぶりの一時帰国の知らせが届くようになりました。
ようやく以前のように海の向こうとも物理的な往来が再開するのだなあと感慨深い今日この頃。

わたしはというと、異国へ飛び出したい衝動を自身の過去の海外での想い出に浸ることで埋め合わせているところですが、それは決してノスタルジックな逃避だけではなく新たな発見にもつながることも。

自身の人生最初のひとり旅は10代のときのオーストラリア。
今では立ち入ることができなくなってしまったエアーズロックのエリアーノーザンテリトリーといいますーを訪れたのもその頃。

ある日、ふっとそんな遠い時代の旅の想い出を整理していたら、くだんのエリアに住まうアボリジニ、さらに絞りこむと「ンカンギクルンクル族」という先住民の言葉についてのメモ(その頃アボリジニを知りたいと思って何冊か目を通したので気になるワードを記録していたのだと思います。)が出てきました。


“dadrirri” ダディリ

オーストラリア・アボリジニ語
・深く耳を傾けること。
・自然界における自分の位置について謙虚に考えること。


メモしたことなどすっかり忘れ、ましてその言葉や意味すら記憶の片隅にもなかったこのワード。
エアーズロック周辺を訪ねたことがある方はこのことばの奥深さと神秘性に深く頷かれることかと思いますが、特に朝焼けや夕暮れ時には瞑想的で思索的なこの言葉の響きと意味があまりに的確すぎて圧倒されてしまうほど。

さらに、ンカンギクルンクルという名称も、言葉または音を意味する「ンカンギ」と「水」を意味する「クル」と「深い」を意味する「クル」で成り立っているそうです。つまり、部族の名は「深い水の音」。

その頃は若すぎて部族の名の由来から想起される自然とのつながりの豊かさへまで思いを馳せるには至らなかったけれど、あの地の自然環境との共存への畏敬の念や宇宙的な強大な力に古来の人々はどれだけ心を開いていたのだろう。と、もう一度あの地の風を感じたくて、こころは再びオセアニアのおへそへと向かいたくなるのでした。

とはいえ、今いる環境やそれを表現することばの響きこそ違えど、わたしたちが毎日目にしている空の景色や山々、海、川などにもっと謙虚に目をひらいて耳を澄まして、受容の海へ意識的にもぐってみることはすぐにでもできること。

雨の日はとくに煩雑な生活の渦からしばし脱け出して、自分の暮らし周りだけでもじっくり“dadirri”してみてはいかがでしょう?

2022年6月14日 

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Miki

English Lab/ doers(ドアーズ) 主宰。完璧さよりも小さな一歩を応援するパーソナルイングリッシュコーチ。文章やコーチングレッスンをとおして、心を整えきらめく日々を提供できたらと探求する日々

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