五感でみつける 目で感じる
景色を聞く。こころで聴く。
先日、4歳のとき目の手術をされたことで光と完全にさよならをされた方(その方曰く、その後の自身の状態をシーン(景色)がない状態。ということで「シーンレス」と名付けたそう。)がシーンレスの中、感受性を育んできた足跡(そくせき)をやさしい筆致で書かれたエッセイに出会いました。
日頃、目から耳から情報の洪水のような中で暮らしているわたしにとって、幼少期から光を失いながらも五感を育まれてきた方のお話はとても興味深く、日常生活の中で匂いや音ともっと豊かに関わってみたい!と思えることばかり。
例えば、「豊かな音の聞き方①細かく聞けばキッチン・シンフォニー」というエッセイでは、カップに水を注ぐ音とお湯を注ぐ音の違いが筆者の方にはわかり、煮物がしっかり煮えているときと、まだ煮え切らないときの音の違いが耳を澄ますとわかってしまう。という筆者の驚くべき細やかな感性が描かれています。
「水を注ぐ音は、まず注がれた最初の一滴がカップの底にタッと当たるところからはじまります。
タッ・チャルルルルルルリリリリリロロ・ヒュッ
カップの底に最初の水滴が触れ、中が満たされていくにつれて注がれるときの音程が高くなります。」
『センス・オブ・何だあ?―感じて育つー』 三宮麻由子(福音館書店2022年)より
これを読んで、実はわたしも早速同じ状況でチャレンジしてみたのです。
が。うーん。。。こんなすてきな響きは全く耳に入って来ないばかりか、カップの向きや柄に目が入って、ひとつの所作の中でなんて音だけに集中できていないんだろう!という人生初の気づきが訪れたのでした。(水の音といえば生まれてからこの方100万回は聞いているというのに!)
筆者の三宮さん曰く、「調理は音楽、調理器具は楽器」だそうで、その領域までぜひ生きている間に到達してみたいものだ、と目下鍛錬中。
こうして自分のセンサーの錆び付きにハッとさせられながらも、人間は本来こうして感性のアンテナをもっともっと豊かに研ぎ澄ませる可能性を秘めているのだと思うと、この歳になって改めて新しい人生のお題を頂いたようで、にんまりしてしまうわたしです。
自然界もあちこち芽吹いて光り輝く季節。
外で内でーこんな小さな感覚を磨くゲームをちょっと取り入れるのも悪くないと思っています。確実にーカラダもこころもよろこぶこと請け合い!なので。
参考図書:『センス・オブ・何だあ?―感じて育つー』 三宮麻由子/福音館書店2022
2022年3月16日 ●
Miki
English Lab/ doers(ドアーズ) 主宰。完璧さよりも小さな一歩を応援するパーソナルイングリッシュコーチ。文章やコーチングレッスンをとおして、心を整えきらめく日々を提供できたらと探求する日々
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