五感でみつける 目で感じる
弾むエネルギー
梅雨のころに吹く南風のことを、「ながし南風(はえ)」と言うらしい、と知ったのはつい先日のこと。
湿度が高く、蒸し暑い今の季節をこのように風情あることばで彩ったいにしえの人々の美意識に思わず一礼したくなるというもの。
そして、鉛色の空の下、「ながしはえ」と言ってみることで、鬱々とした気分に何かしら柔らかなエネルギーがすっと差し込み、重苦しさを中和してくれるようなそんな気もするのです。
言葉には本当、エネルギーが乗っかっていますね。
目には見えない、肌感覚でしか受信できない正体不明の心地よさ。
言葉に限らず、身の回りのものにもそれはとてつもなく漂っていて、たとえば先日届いた赤色のブラウス。
これはNさんという大好きな作り手さんが布選びから色からデザインから裁縫から丁寧に手をかけて仕上げられた一着。
ぱっと箱を開いただけで、目を奪われ、その触感や秩序だった細やかな縫い目が輝かんばかり。
ボタン一つ一つも糸の通った小さな穴まで全てが愛おしく、袖を通してもいないのにこのお洋服とわたしは最高のパートナー。そう確信してしまえるほど。
表からは見えない折り返しや細部にそれはそれは真心こもった仕事が施され、ああ・・・Nさんのエネルギーが宿っているんだな。そう感じました。
洋服をつくることが楽しくて!着る人の笑顔がうれしくて!そんな声さえ聞こえてきそうな弾むエネルギー。
それはいわば職人の方の丹精こもった作品だから当たり前。-という声もあるかもしれないけれど、誤解を恐れずわたしの独断的な意見を披露させていただくと、残念ながら100%とは言い切れません。
完璧なのに何かどこかよそよそしい。そういう空間だったりモノだったりはたまた人だったりー出会った経験はありませんか?
逆に不器用でもお母さんが早起きして作ってくれたシャケ弁当。おかずはシャケと卵焼きのみでちょっと淋しい・・・でも味わい深くてやさしい味。
わたしが日ごろ行っている英語のレッスンだって、本音が見えない非の打ちどころなく淀みない会話や文章より、とつとつとだけどその人らしい感情がちりばめられた表現にはパーフェクトな発音や文法力よりこころを打ちます。
その正体はやっぱり弾むエネルギー。
その大きさも威力もまったく数値化できないけれど、背伸びせずかっこつけずにその人らしさ溢れる愛は少なくとも半径3メートルの周囲を明るく照らすひかりです。
梅雨明け宣言まであとわずか。そんなささやかなエネルギーを意識しながら、家の内も外もカラリと健やかに過ごせますよう。
2020年7月5日 ●
Miki
English Lab/ doers(ドアーズ) 主宰。完璧さよりも小さな一歩を応援するパーソナルイングリッシュコーチ。文章やコーチングレッスンをとおして、心を整えきらめく日々を提供できたらと探求する日々
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