五感でみつける 目で感じる

ほんとうの空色とネモフィラと

まばゆい陽光に満ちてきた4月。
世界は疫病の猛威にさらされて
春の陽気と自分の気分がアンバランスな毎日。
というのが正直なところなのかもしれません。

そんなときだからこそ、今こころ洗われるのは近所の軒先の
春の匂い漂うフリージア、風に揺れるビオラにカランコエ、そしてー
川沿いの公園いっぱいに広がるネモフィラの可憐な姿。

ネモフィラはどんな土地にも根付きやすく横に広がるように「ほふく」して覆い茂りやすい花ということもあり、花言葉はその愛らしさをイメージしたものかと思いきや「どこでも成功!」という全くもってポジティブなメッセージが込められているようで意外な発見をしたところです。
(*一方で「可憐」や「清々しさ」という花言葉もあるそうですが)
 
どこにいても、どんな環境下であろうとも揺るぐことなく凛と咲き誇る。
―今のこの状況にぴったりの花言葉だなあと静かにそっと励まされます。

そして、このネモフィラの透けるような「青」を眺めて思い出すのは、
ハンガリーの作家、バラージュ・ベーラさんが書いた子どものためのお話
『ほんとうの空色』という一冊。
 
物語を簡単にお伝えするとー
母親と二人暮らしのフェルコー少年。家は貧しく大好きな絵を描く絵の具を買うお金もありません。ところがある日、野原に咲いている美しい青い花畑を目にし、用務員のおじさんに、それは『ほんとうの空色』という花だよ。と教えてもらいます。少年はこの花の汁で青い絵の具を作り、空を書いてみるとーなんとある日その空にほんものの太陽や月や星が輝き出したのです!
そしてそこから少年は不思議な出来事にめぐり合いー

こころが清らかになるファンタジーでもあり昔の東ヨーロッパならではの哀しみもありーと子どもの物語の枠にとどめるのはもったいない上質でこころ踊る素敵なお話なのです。だって想像してみてください!自分が描いた絵が太陽となり光を放ち、夜になると月と星が輝いているのです!

おそらく、この物語に出てくる青い花はネモフィラとは違うようなのだけれど、
今のこの季節に力強く咲き誇る小さなこの花々を眺めていると、この「空色」の天然絵の具のことが思い出され、フェルコー少年の描いた「ほんとうの空色」が傍らにあったらどんなにすてきだろう、と妄想が止まりません・・・。

今の社会情勢の中では無意識のうちに、こうして自然界に思いを馳せることは難しいのかもしれないけれど、逆にそんなタイミングだからこそ、
改めてわたしたちひとりひとりに備わっている「感覚の目覚め」を春の訪れとともに意識していたい、とも思うのです。

 青空を見上げ、春のかぐわしい匂いを嗅ぎ、大地の恵みの食べ物を口にできること。大切なひとたちを想うこと。
自分の感覚の神聖さを自覚し続けられるように・・・。

「五感以外に魂を癒すものはないし、魂以外に五感を癒すものはない。」
                          オスカー・ワイルド

2020年4月8日 

< 戻る次へ >

Miki

English Lab/ doers(ドアーズ) 主宰。完璧さよりも小さな一歩を応援するパーソナルイングリッシュコーチ。文章やコーチングレッスンをとおして、心を整えきらめく日々を提供できたらと探求する日々

https://lit.link/doers

このページのトップへ