五感でみつける 目で感じる
早春の息吹
冬の終わり、そろそろグレイな色彩に別れを告げる頃―
鮮やかなルビー色したチューリップに目が留まる。
次の季節を送り込む息吹を感じる力強さ。
でもその強さは骨太さではなくたおやかさ、と言ったほうがいいかもしれない。
そしてチューリップはどういうわけか卒業のイメージ。
花開く季節がそうしたシーズンだということもあるけれど
いわゆる「卒業式」だけでなく、
冬から春へ、陰から陽へーあらゆることがリニューアルされるような
そんな切り替えの風を伴って、みずみずしい「はじまり」の息吹を連れてくる。
そろそろ古い鎧を脱いで次のステージに備えなさいね、
そう言われているような気配さえ感じる。
スイトピーのようなフェミニンなかわいらしさとも違い
ヒヤシンスのようなかぐわしい香りを漂わせる花とも違い
何かこう、次へ次へと前進を促されるようなそんな不思議な存在だ。
そして。
子ども時代の思い出も同時にまっすぐ降り注ぐ。
小さな庭には所狭しとチューリップの球根が植えられ、雪が溶け陽射しが緩みー
新芽がじわりと地面から顔を出すのを今か今かと待ちわびる日々がうれしかった。
オレンジ色のエプロンを着けた母は、園芸スコップを持ってしょっちゅう庭先に出ていた。
つられてわたしも花壇を囲むブロックに腰掛け、
希望のかたまりのごとく膨らみはじめた花弁を見つけてはわくわくした。
何か新しいよきことが生まれそうなそんな幸福感に包まれたシンボリックな
存在でもある。
北風をくぐりぬけて、わたしたちの季節もめぐる。
冬から春へ、陰から陽へー
愛でるための花々でもあるけれど、
次なるステージへの案内人のような早春の草花―
みなさんはどんな植物が浮かびますか?どんな植物を選びますか?
2019年2月20日 ●
Miki
English Lab/ doers(ドアーズ) 主宰。完璧さよりも小さな一歩を応援するパーソナルイングリッシュコーチ。文章やコーチングレッスンをとおして、心を整えきらめく日々を提供できたらと探求する日々
https://lit.link/doers