こころに潜る、こころで読む

10月の満月になりました。

2021年もあと2ヶ月ちょっと。今年は駆け足で冬がやってきそうですね。街の様子も10月のハロウィンが終われば、11月からはコロッとクリスマスの装飾に切り替わり、年末モードがひしひしと出始めるのだろうな、と時の早さに毎年この時期はしみじみとしてしまいます。

ハロウィンの季節、ということで、今回は10月31日に迎えるハロウィンの起源を辿る一冊をご紹介します。仮装だけではない、かつての人々がハロウィンにこめた祈りや生命観を知ることでイメージが覆されるだけでなく、ケルトの歴史、神話、民間信仰を広く見渡すことができるのが、『ケルト 再生の思想―ハロウィンからの生命循環』(鶴岡真弓著・筑摩書房刊・924円税込)です。

本書は、ヨーロッパの基層文化を築いたケルトの人々が農耕牧畜と季節の経巡りにあわせて執り行ってきた「四つの季節祭」について紹介するとともに、ケルト文明の循環的な生命思想を解き明かし、現代に生きる私たちに「生命力」について考えさせてくれるような一冊。ケルト文化に興味がある方はもちろん、ヨーロッパの神話や植物について知りたい方にもおすすめです。

「この時季、太陽のエネルギーは極端に弱まり、「光の半年」が終わって、死の季節である「闇の半年」へと反転すると、人々は考えた。」
 ―8Pより引用

ケルトの暦では11月1日から「闇の半年」が始まり、翌年5月1日から「光の半年」へと移り変わります。つまり、ハロウィンは「闇の半年」の前日であり大晦日でもあるのです。この暦の背景には農耕牧畜を営み、季節のサイクルを見つめて暮らす人々の生命観が反映されている、ということについて説明されているのが興味深いところ。

「人間は「季節」の生命の「周期(サイクル)」のなかに「生かされている」。」
 ―112Pより引用

私たちは、いかに冬至の日が一年で最も闇が深まる日と知っていても、頭で理解し、意識をするくらいにとどまるかもしれません。でもケルトの人々にとっては、「闇=死」と直結するほど生々しく、容赦なく始まるこれからの「闇の半年」を体感していたのだと思います。そして、コントロールできない自然と対峙することで実感する「生かされている」という感覚。

今、畑を始めたり(私です)、ベランダでプランター栽培やコンポストを始めたりと、土に触れることを欲している人が増えてきているような気がしています。それは、私たちも無意識的に、直感的に、自然に寄り添うことで得られるもの、野生や「生かされている」という感覚に戻っていこうと行動を起こし始めているのかもしれない、なんてことを本書を読んで感じました。

どんなに長い冬であろうとも、春は必ずやってくるのと同じように、先の見えないようなつらいことだって、やがては必ず終わる、と思えたら、救いになるかもしれません。
今を生きる私たちにとって、たくさんの知識や情報を得ることもよいですが、自然の摂理を知り、受け入れること、感謝することもきっと生活をするスタンスとして必要なことのひとつなのかもしれない。そんなホリスティックで大切なことをケルトの人々から教わるような一冊です。

さて、闇の長いこれからの季節、どうやって楽しみましょう。
先人の知恵や本質に触れてみたり、自然や自分の体のゆらぎに合わせながら、上手に闇の半年を過ごしたいですね。

岩井友美/west mountain books

「私やあなたが本来の自分に戻るための知恵やヒント、きっかけ」となるような、からだやこころ、自然にまつわる本をセレクトしています。2020年まで7年間下北沢・本屋B&Bの書店スタッフとして勤務し、くらし・からだ・旅・食・日本文化にまつわる棚やイベント企画を担当。並行して2020年より個人の屋号としてwest mountain booksをスタートし、現在は長野県上田市を拠点にオンラインショップ、イベント出店をメインに活動しています。2021年初冬に「面影 book&craft」という実店舗をオープン予定。情報はインスタグラムをメインに発信中。

Instagram @westmountainbooks
オンラインショップ https://westmountainbooks.stores.jp/


2021年10月20日 

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