こころに潜る、こころで読む
2月の満月になりました。
少しずつ、身の回りでも春の兆しが見え始め、ワクワクする気持ちや待ち遠しい気持ちが芽生えてくる頃ですね。
私事ですが、2月の頭に東京から長野へ移住をし、生活環境ががらりと変わったことで、心身共にその変化についていこうとしながら、どこか新しい自分になるための切り替え時であるようなかんじもしています。
今回は、私自身が最近体や心について感じていることを交えながら、「体を観察すること」をテーマに、『整体覚書 道順(どうじゅん)』(川﨑智子著・土曜社刊・税込985円)をご紹介させていただきたいと思います。
本書は、『整体対話読本 ある』(土曜社)や『体操をつくる』(自費出版)の著者であり、整体指導者の川﨑智子さんによる最新刊。
不調をきっかけに出会った野口整体により体の全感覚が一致した自覚が生まれ、自由になったという川﨑さん。独学で整体を学びはじめた最初の三年間の経験と体感を短い文章で43編書き綴っています。
整体の専門知識やhow toが載っているのではなく、私たちが普段生きているなかでの体や動作、それから気や感覚などに焦点が当てられているため、整体を行ったことがない方でも自分事として気軽に読める本です。
私は川﨑さんのご本はすべて拝読したのですが、「自分の体と心を、ジャッジせずにただ観察する」ことを実践するきっかけを得ることができました。
「(中略)あるのは、体の働きから心の拠り処を観察することのみ。整体は徹底的に自己観察を重視する。観察力を鍛えよと学ぶ。」(『整体覚書 道順』23Pより引用)
と自分を観察し、整体をとおして技術を身につけることが自身の安定につながると書かれています。
私は、体や心にネガティブなことが起きると(PMSが先月よりひどくなってる、とか、自分を否定する気持ちが強くなってる、とか)、余計に落ち込んでそこから負のループが始まったりしていました。
起こったことに対して、冷静に対処する前に感情が先に暴走しちゃうタイプだったんです。(思えば私のホロスコープは火と水のエレメントしかない)
でも、川﨑さんは、体や心は「器(うつわ)」であり、その人自身の個性を「技術」とみている。
私たちに起こることは「反応」として観察し、「動作」として捉えているのです。
観察者としての一歩離れた目線。
自分の心身を客観的に、あるがままに受け入れること。
これが、感情に翻弄されていた今までの私にはなかった視点だな、と読んだときは目からウロコが落ちるようでした。
起こった事象に対して良し悪しで判断をする前に、まずはその状態をきちんと感じてみる。
そして、感情や記憶、思い込みなどを介入せずに観察を続けていく。
そうするとやがて、自分を知る(=技術を知る)ことができるようになっていく。
私だったら、「感情が強すぎるんだな」とか、「こういうときにこんな反応が出るんだな、でもこの自己否定感は今の自分ではなくて、過去の記憶や感情が発端となっているから、気にせず、手放していけばいいな」とか、眺めたり、分析してみる。
そうやって少しずつ自分のことがわかってくると、同じパターンに引っかからなくなるというか、自ずと冷静に対処ができてくるのです。
もうこれは、本当に日々練習、です。忘れて感情に振り回されるときもあるけれど、川﨑さんの言葉を思い出して、また立ち戻り、ちょっとずつ自分の気づきを増やしていくようなかんじです。
これからは、自分自身のものさしを持つことがきっと大事になると思いますし、私もとにかく今は自分に集中する時期だな、と実感しています。
周囲の人や状況や情報、目にみえない恐れに揺さぶれても、自分自身を知り、信じていることができていれば、きっとどこかで安心に戻ることができると思うのです。
川﨑さんの本を読んでいると、整体の深さの片鱗に触れさせてもらったようで、整体についてもっと知りたくなります。
他者を通じて自分を知るきっかけを得ることもあるけれど、本書で、「独りで整体を学ぶ技術」が書かれているように、自身の体や心の反応を一番知らなくてはいけないのは私である、という自覚が芽生えてくるのではないかな、と思います。
春分を前に、気持ちを新たにしていきたい、という方の手助けになる本です。
気になる方は、ぜひお近くの書店で手にとってみてください。
west mountain booksのオンラインショップでも、『整体覚書 道順(どうじゅん)』『整体対話読本 ある』『体操をつくる』を揃えていますので、どうぞご覧ください。
心身を健やかにして、ワクワク、楽しい春がたくさん訪れますように。
【プロフィール】
岩井友美/west mountain books
「私やあなたが本来の自分に戻るための知恵やヒント、きっかけ」となるような、からだやこころ、自然にまつわる本をセレクトしています。
2020年まで7年間下北沢・本屋B&Bの書店スタッフとして勤務し、くらし・からだ・旅・食・日本文化にまつわる棚やイベント企画を担当。並行して2020年より個人の屋号としてwest mountain booksをスタートし、現在は店舗をもたずオンラインショップ、イベント出店をメインに活動しています。情報はインスタグラムをメインに発信中。
Instagram @westmountainbooks
オンラインショップ https://westmountainbooks.stores.jp/
西山友美/west mountain books・本屋B&Bスタッフ
2014年からB&Bに勤め始め、書店業務を中心に、食・くらし・旅・日本文化にまつわるイベントも(たまに)企画。2019年の秋頃からゆるゆると個人の屋号で「west mountain books」を始めました。自分が感じていた生きづらさを本で救われてきた部分が多いので、そんななかで知った本や知恵をシェアできて、共感しあえるような場所を作るべく思案中です。instagram→@westmountainbooks
2021年2月27日 ●